05 TEDxKeio スピーカー 中村壱太郎さんとの対談

堀内康資 TEDxKeio Speaker Selectionチーム

新橋演舞場近くの、とある会議室。
ここで、TEDxKeioスピーカーである中村壱太郎さんとの顔合わせが行われた。

 

歌舞伎俳優・中村壱太郎さん。
坂田藤十郎を祖父に持ち、若くして実績を積み上げてきた気鋭の歌舞伎俳優だ。
まさに「向こうの人」であり、緊張するなというほうが無茶な話である。

 

今回の目的は、当日の登壇に向けて、中村壱太郎さんのアイデアを引き出し、掘り下げるお手伝いをすること。しかし、相手はプロの表現者である。そんな彼に何か貢献できることがあるのだろうか?そんな無茶が、緊張の原因だった。

 

会議は、壱太郎さんが予め考えてきてくださった素案に基づいて進められた。最初は、壱太郎さんから溢れ出る興味深いお話に呑まれ、うなずくのが精一杯であった。しかし、壱太郎さんが過ごしたSFCでの生活に焦点が移ると、それを共有する学生から質問や意見が活発に生まれ、それを手がかりに、難しく聞こえていた部分を各々が理解し、疑問を壱太郎さんにぶつけていった。

 

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なぜ歌舞伎なのか。表現するとは何なのか。伝統とは何か。
核心的な話題に接近しつつ、話は深まっていった。ここに至って、すでに壱太郎さんは肩書による「向こうの人」ではなく、それを越える熱量と魅力をもった「おもしろい人」になっていた。

 

個人的にうれしかったのは、表現者としての壱太郎さんと、歌舞伎役者・中村壱太郎という二者の葛藤について尋ねたとき、「こんなインタビューをされたことはなかった」という言葉を頂いたことだ。「向こうの人」相手にこちらが学ぶだけでなく、一人のインタビュアーとして、新しい視点を持ち込み、互いに学び合う場を生み出すことができた。そして、それこそTEDxKeioが目指す”crossing”の価値であるように思う。

 

慶応義塾では、小学校から大学院に至る「縦糸」と、人文科学と自然科学を網羅する「横糸」が交差し、魅力的な出会いとアイデアが生み出されている。その交差点として明確な位置を占めうるのが、このTEDxKeioである。多様な人々が出会い、刺激し合って生み出される価値。TEDxと慶応義塾が共有する価値が、まさにここに凝縮されている。

 

「向こうの人」がさらに世界を変えるような価値を生み出していくだけではなく、聞き手である我々も、ひらめきや熱量を得て己の可能性に点火する機会になるに違いない。ぜひ、多くの方にこの「交差点」を目撃していただきたい。

 

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